資金循環報告を見て思うこと


ここに示すのは最新の資金循環報告です。
https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf

これが日本国に関する資金の流れを図示しています。バランスシート風になっていて左が債務、右が資産です。jesse Colomboが中国の債務を図示していますがこれが日本の場合どうでしょう。左の債務を見ると、家計が320兆円、民間非金融機関が1,785兆円、一般政府が1,284兆円です。これを合算すると3,389兆円となり、日本のGDPは500兆円程度ですので、日本の債務は優に600%を超えています。となると中国よりも日本がMMT先進国ということになります。果たしてこの解釈で良いのかどうか?

多分、民間非金融機関債務の「証券」はこういう計算の場合に考えないのでしょう。となると対GDP債務は400%程度で米国と同程度になります。中国は先日紹介した記事にもありますが、シャドーバンキングを考慮すると対GDP債務が700%程度で群を抜いています。


ネットで検索しても、日本の債務に関する記事は政府債務に言及したものばかりで、日本国全体の債務に関する記事は殆どありません。また極端な安心理論と破滅論の両極端です。

極端な話、国債発行が無限にできるなら税金なしの夢の国家ができます。そんな訳はないでしょう。共産主義が破綻したのもこの安心理論の行きつく先ですからね。でもソ連が建国から破綻を迎えるまでには70年を要しました。投資をする立場から言うと人の投資人生は30歳から60歳までとしてわずか30年程度です。多くの人にとってあと30−40年破局を迎えないなら問題ないわけです。ただこの手の臨界問題は地震と一緒で時間スケールを見るのが難しい。

国債の消化という観点でこの図を見ると、右側の民間企業や一般政府が国債消化に対応するとは思えません。民間企業は総体としてみたときには金融資産を赤字にして富を生み出すもので、貯蓄や国債を持つわけがない、そんな企業は資本主義社会では退場ものでしょう。

となると左の家計負債(住宅ローン等)320兆円と一般政府負債1,284兆円を支えているのは右側の家計資産となります。でも家計資産の内証券というのは大半が株式でしょうから、これが国債を支えるはおかしい、ということになります。となると
負債:320兆円+1,284兆円=1、604兆円を 資産:1,859兆円−307兆円=1,552兆円で支えることになります。となると明らかに収支が合わないわけで、日銀の国債買取なしには日本国債を支えられないことになります。というわけで日銀の国債保有は減らすことができないのも納得します。私は日銀の量的緩和の本当の役割は財政ファイナンスにあると見ています。インフレを待たないと日銀の持つ国債は減らせるわけがないと思っています。

ネットでは海外資産が800兆円あるなんて記事も散見します。この最新資金循環でも海外資産が1,040兆円と書かれています。これが上の資産の内数なのか外数なのか私にはよくわかりません、たぶん内数だと推測しています。詳しい人がいれば教えていただければ。ただし左に海外債務もあるわけで実質的にはこの差額が海外資産ということでしょう。

ネットにある800兆円が気になり少し検索するとこういう記事がありました。
この記事を見ると2013年頃の対外資産が800兆円程度なのでその数字でしょう。ここでは資産と負債を引き算して純資産もグラフで書かれています。

でもね、この対外純資産ってこの記事にもありますが企業が海外生産したりするためのもので、これを国債購入に充当すると国が成り立ちなくなりますよね。それはさきほどの個人資産のうちの株式を国債購入に当てようとした途端に株価の価値がゼロになるのと同様です。国債消化の議論でこの海外資産を当てにするのは的外れのように思えます。

というわけで、どなたか詳しい人に、安心理論でも破滅理論でもない解説をしてほしいと切に願います。





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