年収500万円家計の国民負担率
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先日、古い知人と食事をする機会があり、その中で税負担の話題が持ち上がった。私の向かいの人が、「北欧のような高負担高福祉に日本も向かうのだろうか?」というようなことを口にした。私が「日本もすでに結構な高負担なんですよ」というと、驚いていた。
たしかにテレビなどでは「北欧は高負担高福祉だが日本は・・・」と語られるのがもう常套句でそう思い込むのも無理がない。テレビしか情報源のない人は全体像を掴むのが容易ではない。特に日本は一般会計と特別会計に分離されており、こういう国はそう多くない、というか私は他国でそういう例を知らない。またサラリーマンの場合社会福祉費用を個人負担と会社負担に折半しておりこれも他国との比較を難しくしている。海外でこういう国があるのだろうか、私は寡聞にして知らない。テレビしか情報源のない人は税金と言えば「消費税」、しかもだれかが作り上げた「痛税感」と言う言葉に振り回されている。
徴税とその分配が民主主義の根幹部分にあると思うがテレビなどでは一部だけを取り上げるので全体像が把握できない。
年収500万円の家計を対象に国民負担を計算した。自宅と自家用車を持っているとしている。
いくつか説明するが
1.税込年収500万円と言っても雇用主から見た人件費は575.6万円だ。世界標準では、税込年収575.6万円というべきだ。
2.日本では自動車の任意保険加入率が70%程度で年間10万円ほどだがこれは考慮していない。海外で自賠責の補償範囲と掛け金がどうなっているのかを私は知らない。自動車任意保険を考慮すると国民負担率は2%ほど増える。
3.年間30兆円の財政赤字分が5%に相当する。世の中にフリーランチはなく将来のどこかで返済すべきならこれも考慮すべきだ。
4.家庭当たり年間1万円ほどだが、再エネ賦課金もほとんど税金と等価だ、逃げようが無い。これは考慮していない。
すでに国民負担率は50%を超えている。
テレビや新聞では「痛税感」と消費税の累進性を枕詞のように言う。しかし一番負担の大きな年金掛け金と健康保険料は月額報酬60万円程度に上限があり、高所得者は極端に優遇されている。消費税の方が遙かに公平、というか高所得者の負担(率ではない)が大きいと私は思う。ゴーン氏のヨットでも日本で買うと消費税から逃れることはできず、高額納税してくれる。お金もちもタンス預金でない限りは銀行預金はだれかが使ってくれる。使う人が消費税を納入する仕組みになっている。
また新聞や野党は法人税をもっと取れと決まり文句のようにいうが、悲しいかなそういう論陣を張る人はサラリーマンの源泉徴収の発想から抜け出せない。日本の法人で黒字納税をしているのは3割程度だ。自分が経営者になればすぐ分かるが会社経営は如何に赤字にして税金から逃れるかが寛容だ。中小企業の親父は節約して軽自動車を使い決算を黒字にして納税しようとは思わない、高級車にすれば経費になるし、経営が怪しくなったときは売却して事業費用の足しになる。
最近年金が話題になっているが、年金は掛け金と年金支給がバランスしている。野党は消費税には反対するが年金支給額を増やせとなじる。そんな魔法のようなことができるのなら自ら制度設計を示してほしい。多少の運用益はあるとしても運用学が巨大でそう市場パフォーマンスを上回れるものではない。昔野党議員で年金運用は株式よりももっと安全な国債ですべて運用するように、と言った人がいた。国債の利息は将来の税収だということをご存じないらしい、国債で運用するくらいなら直接税金を投入したほうが無駄がない。でもこういうことを言う議員が地元で拍手を浴びる。民主主義は有権者に見合った議員を選ぶのだ。
最近の年金を回る国会の議論で野党は「それぐらいしか年金支給できない国なのか」と勝ち誇ったように政府を揶揄する。でも、国民年金だけだと食べていくだけでも無理だと誰もが分かる。こういう制度のことには決して触れない。自らもかつては与党で閣僚だった人がその時には年金制度には何も手をつけず、自分が野党になると与党をなじることでテレビの注目を浴びようとする。本人はそのことを理解しているのだろうか?
テレビでは街頭インタビューでもっと年金をくれと喋っているのは、明らかにもらい得の世代だ、こういう人を選んでインタビューしているのだろう。
国民が「痛税感」を感じないようにするには、消費税を凍結して、年金賦課金とか健康保険料を引き上げると良い。この方が政治的には容易だ。
おまけ:2014年の調査で60歳代、70歳代の金融資産平均値は2000万円をこえている。年金ですべてを賄えないことなどほとんどの人は理解している、と私は思うがどうだろう。
https://www.stat.go.jp/data/zensho/2014/pdf/gaiyo4.pdf