半導体用フッ化水素酸の韓国輸出
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今朝のワイドショーで半導体用フッ化水素酸の韓国への輸出量激減で多数のコメントがありましたが、かなり誤解しています。
https://this.kiji.is/539619080493401185
まず、半導体用フッ化水素酸はフッ化水素酸とフッ化アンモニウムを混合したバッファー液です。中学の化学で習ったでしょう?強酸と弱アルカリの混合液を用いることで基板エッチングで金属が溶け込んでもpHが変わらないようにするためです。またエッチングの際にでる気泡が基板について欠陥を生じないようにするため界面活性剤も添加しています。よく「軍事転用も可能な弗酸」と言われますが、ウラン濃縮のために弗化ウラン生成時にはここまで高品質なフッサンを必要としません。またフッサンは劇薬でしかもヒ素のような不純物を除外して半導体仕様の高純度な製品を環境汚染・従業員の安全に考慮して大量に安定してつくるには長年の積み重ねが必要です。
また、テレビワイドショーでは日本からの輸出が減った部分を中国からの輸入で補うといいますが、フッ化水素に限らず半導体プロセスの材料を転換するのはそう簡単ではありません。半導体プロセスはシリコン基板投入からチップ形成までに3か月ほどかかります。半導体プロセスの最適化のためにはこの過程を何度も繰り返すのです。そのためどの半導体メーカーも複数の製造拠点を持つときには製造設備も原材料も処理プロセスも全く同じにしています。プロセス開発というのは大変時間を要するのです。今回のような輸出規制強化があったからといってすぐに素材供給元を変えることは出来ません。
一方、韓国は国内に半導体プロセス用フッ化水素工場を持たないにも関わらず、多量のフッ化水素を中国に輸出していました。
http://agora-web.jp/archives/2040357.html
ワイドショーで韓国通と言われる人が、韓国半導体メーカの伝聞ということで、「輸出管理が強化され機密技術情報まで開示しないと認可がとれなくなり、やむなく中国から輸入することにした」と言ってました。私の解釈では「仕向地、半導体生産量を勘案した適正量の申請が必要で、今回の規制強化で、自社在中国工場向けとはさすがに書けなくなった」ということです。さらには、いま半導体不況で韓国の半導体工場には在庫が積み上がっています。そのため工場の操業率もかなり低下しているはずで、これも重なっているでしょう。中国のフッサンを利用できるならこれだけ長期に渡り韓国から中国にフッサンを輸出してきた、しかも韓国国内には半導体級フッサン工場がないにもかかわらず、といのはありえないでしょう。レーダー照射以来繰り返される韓国のすぐわかる嘘のいいわけでしょう。
思い出すと7月の3品目輸出管理強化ニュースでサムスンのトップがすぐに訪日しましたが、あのときも迂回輸入の方法についてトップが直接交渉に来たとニュースで伝えられていました。たぶんあの人も若く、かつてのココム規制など記憶になくその後のワッセナー条約も理解していないのでしょう。ココムは本当に厳しいものでした、技術仕様について微に入り細に入り定義されていました。東芝がソ連原潜スクリュー加工機器で大打撃を受けたのを覚えているでしょう。あのサムスンのトップに輸出管理とはなんぞやというのを教える人が社内にいないのでしょう、たぶん。
また、3品目管理強化後にすぐ、韓国政府から輸出管理担当者2名が通産省に来ましたが、ニュースによると彼らは「キャッチオール」という概念を知らなかったようです。これはワッセナー条約で重要な部分です。日本側が丁寧に説明したようですが、自らの無知を怒りで返したようです。国を代表して輸出管理の打ち合わせに来る人がこの程度の知識なので、組織全体の輸出管理レベルを推して知るべきです。
また、3品目の中には、EUVレジストも含まれています。半導体プロセスは製品の高性能化指標として微細化がとても重要です。今は8ナノプロセスが主流ですが、今世界では5ナノプロセス開発でしのぎを削っています。回路を焼き付ける際の光の波長が短くなるほど微細なパターンを形成できます。この紫外(EUV)レジストが次のプロセス開発に欠かせないものです。これも仕向地・用途により厳しく制限されます。この先端半導体プロセスは今米国が対中国で争っている技術覇権の中核を担うものです。HuaweiがArmコアを利用してチップを設計できても、5ナノプロセスがなければ性能を実現できません。今回の3品目規制は米国からの指摘、もしくは日本の経済産業省が米国と密接な連絡のもとに実行したと私は想像しています。
というわけで、米国が、Gsomiaが大切なので「韓国に対する3品目規制をもっとゆるくしてやれ」なんてことを言うわけはありません。