先端露光機メーカーASMLが中国納入を見合わせ


昨日の日経に先端露光機メーカASMLが中国への納入を見合わせているという報道がありました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51849370W9A101C1FFE000/

これは日本の韓国向け輸出規制厳格化と関連したことだと想像しています。

半導体チップはその回路を微細化するほどに性能もコストも向上します。回路微細化のためには回路焼き付け時の光の波長を短くする必要があります。現在実用的な紫外線露光機を供給できるのはオランダASML社のみです。かつて半導体露光機で大きなシェアを取っていたキャノンもニコンもその面影はありません。最先端露光機は一台100億円程度で、半導体工場あたりこれを数台から10台設置します。メンテナンス等を考えた処理量維持のためです。また紫外線露光をするための実用的フォトレジストは東京応化、JSRしか提供できていません、一部米国デュポンも提供しています。

また半導体回路設計にはARMのライセンスが必要ですが、米国開発の知的財産権が多く組み込まれているため、ARMはHuaweiとライセンス更新をしないと宣言しています。さらに、設計時のCADツールなどは100%米国製です。

半導体微細加工のためにはフォトレジストで微細な回路を転写しそれをフッサンでエッチングします。半導体向けフッサンはフッ化アンモニウムとフッサンの混合液でPHを安定化させるバッファードフッサンと言われるものです(中学の化学で習ったはずです)。日本から韓国へ多量の半導体向けフッサンがここ数年多量に輸出されており、韓国の半導体出荷量と辻褄が合わないため通産省が韓国に問い合わせを継続していましたが3年間回答がありませんでした。一方韓国には半導体向けフッサンメーカーが無いにもかかわらず、中国の貿易統計で多量の半導体向けフッサンが韓国から輸入されていました。中国の統計はほとんどが信用できないのですが唯一の例外が貿易統計です。貿易は相手国があるので嘘の数字はすぐにバレてしまい、本当のことを書かざるを得ません。
LG、SKハイニックスに限らず世界のどの半導体メーカーもその処理プロセスは配下の工場で全く同じレシピにしています。機器、薬品温度、濃度、使用量等々です。そうしないとプロセス開発に巨額の時間と予算が浪費されるからです。半導体製造は最初にシリコン基板を投入してから多くの回路焼付を行いチップが出荷されるまでに数か月を要します。向上ごとに異なるレシピ開発をするなんてことは考えられないのです。韓国半導体メーカは韓国国内のみならず最近中国本土に工場を建設しています。そこでも韓国と全く同じレシピで製造するはずです。

貿易管理は当然仕向地によるものであり、韓国が日本から輸入したものを第三国に再輸出すると貿易管理の根底が崩れてしまいます。半導体チップの生産量からして合理的でないと通産省が再三問い合わせていたのに韓国から3年間無回答だったわけです。

Huaweiはその配下のHisiliconで既存ARMライセンスでチップ設計はできますが、製造は外部委託です。そのため、先端紫外線露光設備・レジストを入手できないと先端チップの製造はできません。どちらもそう簡単に一朝一夕で開発できるものではありません。露光機はすでにニコンもキャノンも脱落し残るはASMLだけです。半導体向けフッサンも長年のKnowHowが詰め込まれているはずです、大学で化学を専攻しただけですぐに提供できるようなものではないでしょう。

私は、日本の韓国向け輸出規制厳格化は米国からの強い指導の元になされたものだと理解しています。報道では韓国がGSOMIAと輸出規制引き換え仲裁を米国に依頼しているとされています。しかしそんなこと米国が聞く耳を持たないのは当然です。韓国が検討違いのことを言っているのか、報道の解説が間違っているのか、どちらかだと私は思っています。

追記
「TSMCの南京工場では、台湾政府の指導もあり、地元との合弁企業化も避け、最先端プロセス技術導入も避けて16nmプロセスまでしか対応していない。このため、Huaweiの7nmプロセス(あるいはそれ以降のプロセス)を用いた先端半導体チップは中国国内では製造できず、TSMC台湾本社工場へ製造委託するしかない。」
https://www.semiconportal.com/archive/blog/insiders/hattori/190404-chinafabless.html?print


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